ぜんぶ、ちょうだい。
人気のないところに向かう途中、清水がチョコバナナをちらっと見て言った。
「それ、まじで一人で食べんの?」
「違うし。ひまちゃんから、清水に」
そう言って一本渡すと、清水は一瞬驚いた顔をして、それから嬉しそうに笑った。
絶交してたことなんて、嘘みたいだった。
歩きながら、軽く冗談を言い合って。変な沈黙もなくて、気を遣いすぎることもなくて。
ああ、って思う。
この空気感。全部、清水が作ってくれてたんだ。
そう気づいたら、また泣きそうになってしまった。
学校の中、屋上に続く階段。
人の気配がなくて、静かで。
私たちは並んで座った。
チョコバナナをかじりながら、清水はいつも通りの、明るい声で言う。
「それで? 話したいことって?」
深呼吸をひとつ。
逃げない。
「……私さ」
喉が、少しだけ詰まる。
「清水のこと、友達として好きだよ」
「知ってるよ」
即答。
あっさりしすぎて、逆に拍子抜けする。