ぜんぶ、ちょうだい。
「い、泉先輩のこと、好きじゃないんですか?」
思わず聞くと、水元先輩はあっさり首を振った。
「未練はないよ。あのとき、こうしてたらよかったのかなって後悔はあるけどね」
「……そ、そうなんですね」
一気に力が抜ける。
自分でも分かるくらい、ほっとしてる。
それを見て、水元先輩はすぐに釘を刺した。
「ま、私がかおのこと好きじゃなくてもね」
人差し指を立てて。
「かおのこと好きな女子、いっぱいいるからね? 小鞠ちゃん!油断大敵!」
「は、はい!」
目の前にドアップで迫る美しい顔に、思わずよろけそうになる。
「かお、どこ行ったかは分かんないけど」
くるっと背中を向けてから、振り返って言った。
「小鞠ちゃんなら、きっと会えるんじゃないかな?」
にっと笑って。
「ほら、早く行きなっ!」
「は、はいっ!!」
背中を押されて、私は走り出す。
文化祭のざわめきの中で、今度こそ――
私の気持ちを、泉先輩に、全部ぶつけるために。