ぜんぶ、ちょうだい。



「前と同じこと聞くけど、小鞠ちゃんは、かおのことほんとに好き?」



水元先輩の声が、頭の奥で響く。

初めてこの人と話したときのことを、急に思い出す。


あのとき、私はちゃんと答えられなかった。

自分に自信がなくて、水元先輩には到底叶わないって思ってて、泉先輩の隣は似合わないからって、振られる前提で考えてた。


でも、今は違う。



「……泉先輩の、綺麗な横顔が好きです。ほぼ無表情だし、何を考えてるのかもわからないけど、誰よりも優しい一面があるところも好きです。案外正義感は強くて、放っとけないタイプで、注目されるの嫌いなはずなのに、見捨てないでくれる先輩が好きです。たまに笑った顔を見ると、嬉しくなります。この人に、好きになってもらえたら、私はもうなにもいらないって思うんです。先輩を笑顔にさせるのは、私がいいんです」



心の中で、思いをひとつずつ整理しながら、頭の中で自分に言い聞かせる。


水元先輩と比べたら、泉先輩との思い出なんてこれっぽっちしかない。

まだ知らないことのほうが、圧倒的に多い。


それでも。


私は、私の前で見せてくれる先輩の表情も、言葉も、行動も、全部で、最初の頃よりずっとずっと好きになっていったんだ。


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