ぜんぶ、ちょうだい。
ぐっと、こぶしを握り締める。
走る。
汗だってかいてるし、髪の毛もぐちゃぐちゃ。
最悪だ。
こんな姿で会いたくないのに。
それでも。
それでも私は、
伝えることを、諦めたくない。
足音が廊下に響く。
胸の奥の熱が、全身を突き動かす。
向かった先は、特設ステージ。
さっきよりも人が増えていて、どう考えたって、ここから先輩を探すなんて不可能だと思った。
「……ふぅ」
一息ついて、走り回ったせいでうるさく鳴っている心臓を、なんとか落ち着かせる。
……別にさ。
今日じゃなくたって、いいじゃん。
先輩を見つけられなくたっていい。
だって、明日も、明後日も、これから先、毎日だって伝えられるんだから。
それでも。
だから今日は、せめて。
どこかで、私の声を、聴いてください。
未成年の主張にエントリーしているらしい、ステージ袖の人たちの間をすり抜けて。
私は――勝手に、ステージに上がった。
「えっと、次の方ですか?」
「すいません、ちょっとマイク借ります」
返事を待つ前に、マイクを握る。
前を見ると、そこはもう、ライブ会場みたいだった。
人、人、人。
視線が、一斉に集まる。
……無理。逃げたい。今すぐ、ここから消えたい。
でも。
私は、目をつむった。
泉先輩の顔を、思い浮かべる。