ぜんぶ、ちょうだい。
「ただひとつ、言えることは」
ひまちゃんは、空になった紙パックを完全につぶしながら、少しだけ真面目な声になった。
「噂レベルなら、放っとけばいいけどさ」
ぐしゃ、という音がして、
「泉先輩のガチ恋勢とか、ファンに、なにかされたら」
ひまちゃんは顔を上げて、私を見る。
「ちゃんと言いなよ?」
「……な、なにか……とは?」
思わず聞き返すと、ひまちゃんは待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「え~?少女漫画とかでよくあるじゃん?」
指を一本立てて、
「校舎裏に呼び出し!」
さらにもう一本。
「『先輩に近づかないで』とか言われて!」
大げさに手を広げて、
「こまちゃんがリンチにあうとか!」
「…………ひまちゃん、それ、心配してくれてる?」
そう聞くと、心配だよ~、と棒読み。
感情、どこ行った?
思わずジト目で見ると、ひまちゃんはけろっとした顔で肩をすくめた。