ぜんぶ、ちょうだい。



「……実はね」



私はひまちゃんの方に少しだけ身を寄せて、声を落とした。



「付き合うことになったの」



耳元でそう囁くと、ひまちゃんは一瞬きょとんとして――

次の瞬間、勢いよくのけ反った。



「えっ!?」



びっくりしすぎて、手に持ってたイチゴオレが揺れる。

ストローの先から、ピッて音がしそうなくらい、少しだけ中身が飛び出た。



「ま、じで!?」

「ひまちゃん、しーっ!」



私は慌ててひまちゃんの腕を掴む。

今この声量はダメ。絶対ダメ。

こんなこと大きな声でしゃべったら、ただでさえ広がってる噂が、さらに変な方向に進化してしまう。


ひまちゃんは、私の忠告なんてどこ吹く風で、にやにやしながらストローをくわえた。



「やっぱりさ~。先輩もこまちゃんのこと、好きだったじゃん」



ちゅーっと、間の抜けた音。



「……いや、それは」



言いかけて、言葉が止まる。

なんて言えばいいんだろ。


だって、泉先輩は。

私のことが好きで付き合った、わけじゃない。


そんなふうに思ってる私の気持ちが、たぶん、顔に出てしまってたんだと思う。

ひまちゃんはストローを口から離して、私の顔をじっと見た。


さっきまでの軽いノリが消えて、少しだけ、真剣な目になる。



「……こまちゃん。なにか、あった?」



その声が、思ったより優しくて。

私は小さく息を吐いてから、昨日のことを話し始めた。


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