ぜんぶ、ちょうだい。
「喧嘩でもしてんのかと思ったら、むしろ仲良くなってて。吉川の、そういうところがいいなとは思うけど。普通にビビるから。なんかあったら、すぐ俺に教えて」
「あ……は、はい」
反射的に返事をすると、泉先輩は少しだけ間を置いて、
「あと、」
次の瞬間。
泉先輩の手が、私の右手に、そっと触れる。
ピタッ。
手のひらが重なった、と思ったら。
そのまま、指と指が、隙間なく絡められた。
……っ。
恋人つなぎ。
それが何なのか、理解した瞬間、心拍数が一気に跳ね上がる。
ごつごつしてて、大きくて、体温がはっきり伝わってくる手。
やばい。
手汗、かきそう。
「吉川の頭の中、俺だけでいいよ」
そんなこと、さらっと言うのは反則だと思う。
好き、なんて。
一回も言われたことないのに。
なのに、どうしてこんな言い方をするんですか。
思わせぶりというか、からかってるというか。
……だったら、もう。
さっさと、好きって言ってほしいのに。
頭が、完全にキャパオーバーになる。
泉先輩の言う通り、泉先輩のことしか、考えられなくなって。
手を引くこともできず、目を逸らすこともできず。
ただ、その綺麗な顔に見惚れてしまって。
私は、小さく、こくんと頷くことしかできなかった。