ぜんぶ、ちょうだい。



半信半疑のまま、私は黒板の右端に目をやった。
毎朝、先生が書く日付。

そこに書いてあったのは、間違いなく――私の誕生日。



「……あ」



やっと現実を理解して、間の抜けた声が出る。



「誕生日なの、忘れてた!」



自分でも信じられなくて、思わず笑ってしまう。
すると、ひまちゃんが目を丸くして、すぐに吹き出した。



「普通、自分の誕生日忘れるかな?」



……だってさ、ひまちゃん。

最近、ほんとにいろんなことがあって。
考えることも多くて、気持ちも落ち着かなくて、それどころじゃなかったんだよ!



「……てことは、泉先輩にも言ってねーんだ?」



清水が、どこか楽しそうに、意地悪な笑みを浮かべてそう言った。



「……。」



返事ができなくて、視線を逸らす。

一応。
一応だけど、私は泉先輩の彼女、という立場で。



「別に、泉先輩に祝ってほしいとか、ないし……」

「えー、そうなの?」



ひまちゃんは驚いたように声をあげながら、「せっかく彼女になれたのに、勿体なーい」と床に散らばったクラッカーの紙屑を、ひとつひとつ拾い集めている。


< 202 / 211 >

この作品をシェア

pagetop