ぜんぶ、ちょうだい。
半信半疑のまま、私は黒板の右端に目をやった。
毎朝、先生が書く日付。
そこに書いてあったのは、間違いなく――私の誕生日。
「……あ」
やっと現実を理解して、間の抜けた声が出る。
「誕生日なの、忘れてた!」
自分でも信じられなくて、思わず笑ってしまう。
すると、ひまちゃんが目を丸くして、すぐに吹き出した。
「普通、自分の誕生日忘れるかな?」
……だってさ、ひまちゃん。
最近、ほんとにいろんなことがあって。
考えることも多くて、気持ちも落ち着かなくて、それどころじゃなかったんだよ!
「……てことは、泉先輩にも言ってねーんだ?」
清水が、どこか楽しそうに、意地悪な笑みを浮かべてそう言った。
「……。」
返事ができなくて、視線を逸らす。
一応。
一応だけど、私は泉先輩の彼女、という立場で。
「別に、泉先輩に祝ってほしいとか、ないし……」
「えー、そうなの?」
ひまちゃんは驚いたように声をあげながら、「せっかく彼女になれたのに、勿体なーい」と床に散らばったクラッカーの紙屑を、ひとつひとつ拾い集めている。