子供ができていました。でも、お知らせするつもりはありませんでした。
(佑さんの子供ができてしまったよ!)
(どうするよ?)
(あーでも、どうするもこうするも、できてしまったものは仕方がない。産むのはいいとして、問題は……)

 問題は、父親である佑に知らせるかどうかである。

(私、具体的に自分の素性を教えていなんだよね~)
(あの日だって、明け方にこっそり部屋を抜け出して、ホテルに帰ったし)

 意気投合して佑と睦み合い、美月は彼の腕の中でぐっすりと眠ってしまった。
 翌朝、佑より先に目覚めた美月は現実を直視する。昨日の自分は一体、どうかしていたと、ひとり動揺する。
 こんなこと、酒に酔ってのことならよくあることだろう。今回は酒ではなくて雨だったのだが。

 美月と同様に佑だってきっと目が覚めて、そこに美月がいればショックを受けるに違いない。通りすがりの女を自室へ連れ込んでいたなんて、御曹司の醜聞にも程がありすぎる。
 ここは『なかったことにする』を美月は選択し、迷わず『逃げる』を実行したのであった。

(こんな怪しい女がいきなり現れて、「あなたの子供です」っていわれたら困るわよね~)
(うん、そうよ。やっぱり知らせないでおきましょう!)
(この子には悪いけど、母子で頑張っていこう)

 不思議と美月に下ろすという選択肢は浮かばなかった。生まれてくる子供に、罪はないのだ。
 いま自分のお腹の中に、もうひとつ別の命が入っている。なんだか奇妙な感じがすればこそばゆい感じもする。

 いざ、母になると決めると、しなくてはならないことがたくさんある。美月は行動を開始した。



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