子供ができていました。でも、お知らせするつもりはありませんでした。
 チェックインを済ませて、搭乗口近くのソファで美月と有紀はボーディングを待っていた。この有紀も、美月と同じ帰国組である。

「はい。出発前は個別行動で不安だと思ったのですが、なんとかなりました。怪しい英語ですけど、通じたみたいだし。それよりショーの規模がすごくて、未発表商品を先に覗くことができて興味深かったです!」

 この感想は、本当だ。長年、海外ビジネスショー視察を申請してやっと念願叶ったのだが、その期待をショーは裏切ることはなかった。

「それはよかった。しかも、面白いものもみちゃったし、ね」
「面白いもの?」
「そうそう。檜山(ひやま)さんちの問題児ね」 

 檜山さんちの問題児――これは、昨日のビジネスショーでプレゼンをしていた佑の別名だと有紀は補足する。エリートとはずいぶんかけ離れた彼の別称に、美月は目が丸くなる。
 その美月に向って、有紀はこんな情報を後出しで告げた。

 檜山佑は、親が一生懸命、見合いをセッティングしても片っ端から断っているらしい。静かに断ればいいのに、徹底的に嫌われるように、それはそれはもう辛辣な言葉をお相手の令嬢へ吐いているんだって、というもの。

 そうきくと、その檜山はものすごく性格が悪いような人にきこえる。

(昨日のあの人は、そんなセリフ、ひとことも口にしなかった)
(むしろ、一緒にいて楽しかったんだけど……)

「お見合いって、やっぱり政略結婚みたいなものかしら?」
「創業家だとさぁ~やっぱり御曹司ってことで、親は誰とでも結婚を許すってことはできないんじゃない? いまどき会社がらみの結婚はないと思うけど、一族に迎えるにはそれなりの知性と教養のある女性が求められるような気がする。でも親がセッティングした相手なら、それなりの上品な令嬢だと思うけど、問題児自身のお眼鏡にかなわないとみた」
「…………」

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