キミの隣は俺の場所
花見の約束を交わした帰り道、私はふと楓の様子がいつもと違うことに気づいた。


 夜風に吹かれながら、彼は無言で前を見つめている。


 「楓くん…どうしたの?」

 私が声をかけると、彼は少し躊躇ったあと、ゆっくりと口を開いた。

 「俺にはな…昔、どうしても忘れられないことがある」

 その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。

 「女の人を……信じられなくなった理由だ」

 彼は目を伏せ、声を震わせながら話し始める。


 「昔な、家族が…壊れた。母さんも妹も、俺の目の前から消えたんだ」


 重い沈黙が流れた。
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