キミの隣は俺の場所
時間がゆっくりと流れていく。
楓の呼吸はまだ浅くて不安定だったけど、
さっきより少しだけ落ち着いているように見えた。
私は彼の手を握ったまま、机の上に置かれた薬と水を見やった。
飲ませたいけど、今は眠っている。
起こすべきかどうか迷っていると、ふいに扉の向こうからノックの音がした。
「陽菜? 入ってもいい?」
聞き慣れた声――母だった。
私は小さく返事をし、そっと立ち上がった。
扉を開けると、母がひんやりとした冷却シートと、
新しいタオルを手にして立っていた。
「お母さん…ありがとう」
「いいのよ。陽菜がこんなに誰かのために必死になってるの、初めて見たから」
母は少しだけ笑いながら、私の肩に手を置いた。
私は思わずうつむいた。
気づかれないようにしていたつもりだったけど、
きっと顔にはいろんな感情がにじみ出ていたんだろう。
「…大切な人、なんだね」
その言葉に、胸の奥が静かに震えた。
私は何も言わず、ただ小さくうなずいた。
母から冷却シートを受け取り、再び楓のもとへ。
そっと額に貼ると、彼の表情がほんの少し和らいだように見えた。
「ほら、冷たくて気持ちいいでしょ」
小さく声をかけると、楓は眠ったまま、かすかに頷いたように思えた。
私はそのまま彼の隣に腰を下ろし、また手を握った。
小さな鼓動が伝わってくるたびに、
この人を守りたいという気持ちが強くなる。
窓の外では、いつの間にか星が瞬き始めていた。
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