完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

「そういえば、そのアパレル企業のサイトの決済システム、確かうちの会社が開発した認証モジュールを使っていませんか?」

桐原社長が即座に問いかけてきた。

「ええ、はい。以前導入させていただいた御社のシステムが、認証の根幹に入っています」

「やはり。それであれば、僕にも内部構造の知識がある。なので、きっと力になれます」

その言葉には、他の社員には見せない特別な信頼の眼差しが込められていた。

「桐原社長……」

「ですから、一人で抱え込まないでください。僕の責任もゼロではない。何かお手伝いできることがあれば、遠慮なくおっしゃってください」

彼の言葉が、なぜこんなにも胸に響くのだろう。

「はい、ありがとうございます」

私は再び頭を下げ、急いで会社に戻った。

桐原社長の期待を、裏切るわけにはいかない。
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