完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
その夜、私はオフィスに籠もって修正作業に取り組んでいた。
チームメンバーと連携しながら、一行一行コードをチェックし、テストを繰り返す。
普段はきちんと整えている髪も乱れ、スーツの袖をまくり上げて必死に作業を続けた。
時計の針が、夜10時を回る。
「新谷さん、少し休憩されては?」
「大丈夫です。もう少しで完成します」
チームメンバーたちは順次帰宅し、気づけばオフィスに残っているのは私だけになっていた。
夜の11時を過ぎた頃、私のスマホが鳴った。
「新谷さん、まだ作業中ですか?」
桐原社長からの電話だった。
「桐原社長! はい、もう少しで完成しそうです」
「一人で大丈夫ですか? もしよければ、リモートで確認のお手伝いをしますが」
彼の申し出に、私の胸が温かくなる。こんな時間まで、私のことを気にかけてくれているなんて。
「ありがとうございます。実は、最終チェックで少し不安な部分がありまして……」
「分かりました。今から画面共有で一緒に確認しましょう」
それから数時間、彼は電話越しで私の作業を見守ってくれた。
時々、技術的なアドバイスをくれたり、励ましの言葉をかけてくれたり。
いつもの冷静な経営者とは違う、優しくて温かい一面を見せてくれて、私の心は静かに揺れ動いていた。