完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

「本当は、ありのままの自分で、もっと自由に生きたいんです。自分の意志で、自分の道を選びたい」

彼の言葉に、私は胸の奥で何かが共鳴するのを感じた。仕事の顔と本当の自分。それは、まさに私が抱えている悩みと同じだった。

「私も同じです」

私は静かに答えた。

「仕事では『できるプロジェクトマネージャー』でいなければならない。でも、本当の私は……もっと不器用で、迷いばかりなんです」

桐原社長は私を見つめていた。その眼差しは、商談のときとは全く違う。温かくて、優しくて、そして少し寂しそうだった。

「新谷さん……いや」

彼が言葉を切る。

「何でしょうか?」

「もっと……親しく呼んでもいいでしょうか。梓さん、と」

私の名前を呼ぶ彼の声が、妙に甘く響いて、頬が熱くなった。

「はい……私も、圭佑さんとお呼びしても?」

勇気を出して言った言葉に、彼の表情が明るくなる。

「もちろんです」

時計を見ると、もう22時を回っていた。

「そろそろ、お時間が……」

「ええ、そうですね」

私たちは店を出た。秋の夜風が少し冷たく感じる。

「今日は、楽しかったです」

圭佑さんが、こちらを振り返って言った。

「私もです。こんなふうに、お話できて」

私たちは駅に向かって歩き始める。人通りの多い道で、時々肩が触れ合いそうになる。その度に、私の胸がときめいた。

「梓さん」

彼が私の名前を呼んだ。その響きが、いつもより特別に感じられる。

「今度の休日……もしよろしければ、一緒に出かけませんか」

「!」

私の心臓が跳ね上がる。これは……もしかして、デート?
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