完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

完璧な経営者としての顔、婚活パーティーでの孤独そうな横顔、昨夜の徹夜作業で見せてくれた優しさ、そして今夜見せてくれた柔らかな笑顔。

どれが、本当の桐原圭佑なのか──いや、きっと全部が本当の彼なんだ。

私と同じように、いくつもの顔を持ちながら、心の居場所を探している。

帰宅した私は、春菜に電話をかけた。

『梓、どうしたの? こんな時間に』

「ねえ、春菜。今日ね……」

私は今日の出来事を話した。書店での偶然の再会、カフェでの会話、そして土曜日の約束。

『それって完全にデートじゃない! 梓、婚活パーティーなんて、もう行く必要ないわよ』

春菜の声が弾む。

「でも、まだ分からない。彼には、他に好きな人がいるかもしれないし……」

『梓、それは考えすぎよ。あなたの名前を呼びたいって言ってくれたんでしょ? それって、かなり特別なことよ』

春菜の言葉に、私の胸が温かくなる。

「そうかな……」

『絶対そうよ。土曜日、楽しんできてね!』

電話を切った後、私はベッドに横になった。

明日からまた仕事だけど、今は土曜日のことを考えるだけで、胸が高鳴る。

桐原圭佑──いや、圭佑さん。

彼との距離が、確実に近づいている。この想いが何なのか、まだはっきりとは分からないけれど。

でも、一つだけ確かなことがある。

私は、彼ともっと一緒にいたい。
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