完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

高級ホテルのラウンジで、麗華さんは慣れた様子でアフタヌーンティーを注文した。私は少し場違いな感じがしたが、背筋を伸ばして座った。

「改めまして。圭佑さんの婚約者の、水沢麗華です」

彼女は静かに、しかしはっきりと自己紹介した。その瞬間、私の心に冷たいものが走った。

「婚約者……」

「ええ。まだ正式発表前ですが、両家で話は決まっております」

麗華さんは、微笑みながら続けた。

「圭佑さんは将来、桐原グループ全体を背負って立つ方です。責任も重く、背負うものも多い立場にいらっしゃいます」

私は黙って聞いていた。

「そんな彼に、軽い気持ちで近づく方がいらっしゃると聞いて、少し心配になってしまいました」

その言葉に、私は思わず顔を上げた。

「軽い気持ち、ですか。私は……」

「圭佑さんは優しい方ですから、お仕事関係の女性にも親切にされるでしょう。でも、それを勘違いされては困るんです」

麗華さんの言葉は丁寧だが、その奥に鋭い刃のようなものが隠されていた。

その瞬間、私は麗華さんの表情に微かな陰りを見た気がした。
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