完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する
「私も、最初は圭佑さんのことを愛していると思っていました」
麗華さんがふと呟いた。
「でも、今は分かりません。これが愛なのか、それとも義務なのか」
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。麗華さんもまた、何かに縛られているのだろうか。
「圭佑さんには、素晴らしい未来が待っています。そして私は、そんな彼を支える責任があります。どうか、彼の人生に余計な混乱を与えないでいただけませんか」
その言葉を聞いた時、私は複雑な感情に襲われた。
圭佑さんは桐原グループの御曹司。そして麗華さんは、彼にふさわしい完璧な女性。
でも──本当にそうなのだろうか。
圭佑さんが私に見せてくれた笑顔、温かい言葉、すべては嘘だったのだろうか。
「失礼ですが、麗華さん」
私は勇気を出して尋ねた。
「圭佑さんは、この婚約を望んでいらっしゃるんですか?」
麗華さんの表情が、一瞬凍りついた。
「それは……両家のためです」
その答えに、私は確信した。きっと圭佑さんは、この婚約を望んでいない。
けれど、だからといって私がどうにかできる問題なのだろうか。
◇
会社に戻った私は、仕事に集中しようとしたが、頭の中は混乱していた。
その時、私のスマホが鳴った。圭佑さんからだった。
「梓さん、今夜お時間はありますか。どうしても話したいことがあるんです」
彼の声には、いつもの穏やかさとは違う、何か切迫したものがあった。
「……はい」
私たちは、以前コーヒーを飲んだカフェで待ち合わせることにした。