完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

「私も、最初は圭佑さんのことを愛していると思っていました」

麗華さんがふと呟いた。

「でも、今は分かりません。これが愛なのか、それとも義務なのか」

その言葉に、私は思わず息を呑んだ。麗華さんもまた、何かに縛られているのだろうか。

「圭佑さんには、素晴らしい未来が待っています。そして私は、そんな彼を支える責任があります。どうか、彼の人生に余計な混乱を与えないでいただけませんか」

その言葉を聞いた時、私は複雑な感情に襲われた。

圭佑さんは桐原グループの御曹司。そして麗華さんは、彼にふさわしい完璧な女性。

でも──本当にそうなのだろうか。

圭佑さんが私に見せてくれた笑顔、温かい言葉、すべては嘘だったのだろうか。

「失礼ですが、麗華さん」

私は勇気を出して尋ねた。

「圭佑さんは、この婚約を望んでいらっしゃるんですか?」

麗華さんの表情が、一瞬凍りついた。

「それは……両家のためです」

その答えに、私は確信した。きっと圭佑さんは、この婚約を望んでいない。

けれど、だからといって私がどうにかできる問題なのだろうか。



会社に戻った私は、仕事に集中しようとしたが、頭の中は混乱していた。

その時、私のスマホが鳴った。圭佑さんからだった。

「梓さん、今夜お時間はありますか。どうしても話したいことがあるんです」

彼の声には、いつもの穏やかさとは違う、何か切迫したものがあった。

「……はい」

私たちは、以前コーヒーを飲んだカフェで待ち合わせることにした。
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