完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

カフェに到着すると、圭佑さんは既に席で待っていてくれた。

私を見つけると、いつもの笑顔を見せてくれる──でも、その笑顔の奥に、不安が滲んでいるのが分かった。

「梓さん」

彼が立ち上がって私を迎えようとした時、私は先に口を開いた。

「圭佑さん……今日、水沢麗華さんにお会いしました」

その瞬間、彼の顔色が変わった。

「麗華に……会ったのか」

「はい。そして、あなたに婚約者がいることを知りました」

私は震える声で続けた。

「どうして、教えてくれなかったんですか」

圭佑さんは、苦しそうな表情で目を伏せた。

「すまない。いや、謝って済む問題じゃない」

彼はゆっくりと顔を上げ、私を真っ直ぐ見つめた。

「すべて話します。僕は、桐原グループの御曹司として生まれました。父親が用意した人生を歩むことが、既定路線だった」

彼の声が、普段より低く響く。

「麗華さんとの婚約も、父親が決めたことです。でも、僕は……」

「僕は？」