完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

「僕は、それを受け入れたくなかった。だからKIRIHARA TECHを立ち上げた。自分の力で生きていくために」

圭佑さんが私の手を取ろうとする。でも、私は手を引いた。

「なぜ、私に隠していたんですか」

「君に、本当の僕を見てほしかったから」

圭佑さんの声に、切実さが滲む。

「桐原グループの御曹司としての僕じゃなく、一人の人間としての僕を。君が、僕という人間を愛してくれるかどうか、確かめたかった」

その言葉に、私の胸が締め付けられた。

「それは……卑怯です」

「分かってる。僕は卑怯だ。君を傷つけた」

圭佑さんが立ち上がって、私の前に膝をついた。周りの視線など気にせず、必死に私を見つめる。

「でも、君に対する気持ちは本物だ。君といる時間が、僕にとって唯一本当の自分でいられる時間なんだ」

「圭佑さん、立ってください。周りの人が見ています」

「構わない。今、僕にとって大切なのは君だけだ」

彼の瞳には、今まで見たことのない激しい感情が宿っていた。

「梓さん、お願いだ。もう少しだけ、時間をくれないか。必ず、すべてを解決してみせる」

私は、涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。

「でも、私は怖いんです」

思わず本音が漏れる。
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