完璧な社長は、私にだけ素顔を見せて溺愛する

【圭佑side】

梓がカフェを出ていくのを見送りながら、俺は初めて本当の恐怖を感じていた。

麗華が動いたのか……おそらく、父親の指示だろう。

俺が梓に本気になっていることを知って、手を回したのだ。

カフェを出て、梓を追いかけた。でも、彼女の後ろ姿を見て、俺は立ち止まった。

今、無理に追いかけても、彼女を苦しめるだけだ。

俺は、その真実を隠していた。桐原グループの御曹司であること、麗華との婚約話、何もかも。

梓に本当の自分を愛してもらいたくて、必死で隠していた。

でも、それが彼女を傷つける結果になった。

いったい何をしているんだ、俺は……。

スマホを取り出し、俺は秘書に連絡を入れた。

「明日、父と麗華に会う時間を作ってくれ。話がある」

「かしこまりました。ですが、お父様からも至急の連絡が──」

「構わない。明日、この事態に決着をつける」

電話を切った後、俺は梓が去った方向を見つめた。

明日、残された問題を解決する。父親との決着、麗華との婚約破談、その全て。

そして──梓に、包み隠さず正直に話す。

俺の出自も、婚約話も、全部。そのうえで、もう一度チャンスをもらえるように頼む。

新谷梓──君を失うわけにはいかない。

たとえ君が俺を許してくれなくても、俺は君を守り続ける。それが、君を傷つけた俺にできる、せめてもの償いだ。

明日から俺は変わる。もう隠さない。もう逃げない。君の前で、本当の俺になる。

そのために、まずは全てを清算しなくては。
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