下剋上御曹司の秘めた愛は重すぎる
そして、２４日の夕方、私たちは静岡駅で待ち合わせをした。

現れた伊吹くんからは、いつもの落ち着きよりさらに静かで荘厳さすら感じるような空気が醸し出されていた。

――その目には深く強い意志が現れていた。

私たちは静岡駅周辺を歩き出した。いつもみたいに並んで歩くのではなく、私は少し先を歩く伊吹くんの背中を眺めながら歩いていた。

そしてふと立ち止まると、伊吹くんはようやく重い口を開いた。

「今日これから東京へ出発するんだ」

「そう、何日くらい滞在するの？」

「いや……すでにアパートも引き払って向こうで暮らす。大学はもう残り少ないし新幹線で通学する」

「えっ……」

「遅かれ早かれ、３月には東京での生活を始めるわけだったし、それが少し早まっただけだから」

それは私も同じだった。すでに東京のアパートを契約済、引っ越し業者の手配も済んでいた。

――そして東京に行ってからも伊吹くんとの付き合いは当然続くものだと思っていた。それが恋に変わったらとても幸せだと、そう考えていた。

でも、それは違うのだと、彼の態度や醸し出す空気から伝わってくる。
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