下剋上御曹司の秘めた愛は重すぎる

始まる新婚生活~熱海での告白~

冬の朝、冷えた部屋の空気で目が覚めた。だけど、なぜだか今朝は気分が良い。静岡にいた頃の夢を見ていたような気がする。

その上、いつもの朝よりあったかい気がする。私はガッチリとした温かいものに包まれていた。

そっと目を開けると、そこには人の顔が――

「うわあああぁぁ~! だっ、誰!? 何で私の部屋に!?」

知らない人に抱きしめられて眠っていた。その状況に気が動転して布団の中から飛び上がった。

しかし、動揺しながらも頭の中では、

(目を閉じていても、ものすごい端正なイケメンだわ……)

などと考えている自分がいた。

「落ち着いて、はるちゃん。俺だよ、伊吹だって」

「あ……」

私の寝ぼけていた頭がようやく覚めてきた。

「ごめん、まだ全然慣れなくて……」

普段は低血圧だけど、今朝は顔を身体も熱い。私は一緒に暮らし始めたばかりの同居人――もとい数日前に夫になったばかりの人に非礼を詫びた。

「そりゃあ、そうなるよね。わかるよ」

だが伊吹くんは、愉快そうにクスクス笑ってそれを許してくれた。

そう、私は告白も恋人期間もすべての恋愛イベントもすっ飛ばして、伊吹くんの妻になったのだ。
< 26 / 38 >

この作品をシェア

pagetop