下剋上御曹司の秘めた愛は重すぎる
「5年前、はるちゃんのことを突き放したのは、あの時の俺じゃあ君を守れなかったから。君を守れるだけの力が俺にはなかった」

「伊吹くん……」

「だが結果的には、母さんの治療費のために君との繋がりを捨てたのは事実だ。捨てたくなんてなかったが……。そんな俺を許してくれるか?」

必死で真剣な目をして伊吹くんは私に問うてきた。

「許すも何も、嫌われていたんじゃなくて安心したよ。でも、できたらプロポーズの時に言ってほしかったな」

心が軽くなった私は、彼の心からも重しを取り除くため明るく伝えた。

「ずっと……離れてからもずっと君を想い続けていたなんて知られたら、気持ち悪がられてしまうかなと思ったんだ。それならば契約的な結婚に持ち込んだ方が分があるかと……」

そうだったんだ。私は驚きで目を丸くしながらも、自分も同じ気持ちであることを伝えようとした。

「私も同じ。ずっと伊吹くんのことを想い続けていた。付き合ってもいないのに……。だけど、こんな風に思っていたのは自分だけだと思っていたから。伊吹くんに知られたら引かれると思ってた」

「引くわけがない。はるちゃんも同じ気持ちだったことが、すごく嬉しい」

「伊吹くん……」

彼を見上げて見つめている私を、伊吹くんはそっと抱き寄せた。

そして夕暮れの海沿いのノスタルジックな景色の中、私たちは初めてのキスをした。

「今夜はもう離す気がないから。帰ったら覚悟しておいて」

彼が私の耳元で囁き、私の体温がぐっと上がる。きっと耳まで真っ赤になっているはずだ。

伊吹くんの宣言通り、その日の晩、私たちは初めて結ばれた。
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