幼なじみの隠れた執着愛〜再会した彼は策士なCEOでした〜


 いつからだろう、お姉ちゃんに意見することがなくなったのは。

 子どもの頃はまだ言い返していたような気がする。
 でも、いつしか言い返せなくなってしまった。

 私の言葉は届かないから。
 何を言っても両親はお姉ちゃんの味方をするし、私の話は聞き入れてくれない。

 だから心が擦り切れて疲弊して、口を閉ざすようになった。
 どうせ私が悪者扱いされるのなら、我慢した方が楽だと思うようになっていた。


「……シフト変わってもらえるか確認してみる」
「うん、よろしくね〜」


 お姉ちゃんは原稿に目も通さず、そのままどこかへ出かけてしまった。

 何ヶ月もかけて単行本一冊分の文字を、何度も悩みながら書いたのに。
 お姉ちゃんのエッセイなのに、一文字も読まないなんて。


「本当に私って、お姉ちゃんのいい使いっ走りだよね」


 自分で自分が情けなく感じる時もある。
 プライドはないのかと、自分自身に問いかけてみたこともある。

 もちろん私にもプライドはある。
 だけどこれは、私一人でどうにかできる問題ではない。

 このエッセイを世に出すためにたくさんの大人が関わっている。
 編集担当者、校正担当者、SNSマーケティングの担当者、本の表紙デザインを担当するグラフィックデザイナーなど。

 たくさんのお金が動いている中、私の一存だけでこの企画を台無しにするわけにはいかない。


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