隠れ溺愛婚~投資ファンドの冷徹CEOは初恋の妻を守りつくす~
 その頃まだ小学生だった茉結莉にとって、制服姿の森野は声をかけるのも躊躇われるほどキラキラと輝いていて、ずっと憧れのお兄さんだった。

 そして、ただ見つめるだけだった森野への憧れは、いつしか確かな恋心となり、茉結莉は中学生になった頃、意を決して自分の気持ちを告白しようとしたことがある。
 でもその日に、森野が母親の再婚のため海外に行くことになったと知り、茉結莉の初恋は儚くも消えたのだった。

「もしかして、星社長のお孫さん? 随分と大人っぽくなって驚いたな」

 あの頃のまま優しい笑顔を見せる森野に、茉結莉は頬を赤らめると照れたように肩をすくめる。

「森野さんも……すごく、素敵になってて驚きました」
「そうかな? もう三十歳だからね。時が経つのは早いな」

 森野はそう言うと、寂しそうに目の前の工場(こうば)が立っていた辺りに目をやった。

「ここも、随分と変わってしまった……」

 森野の悔しそうな声色に、茉結莉の瞳がじんわりと潤みだす。

「おじいちゃんが亡くなってから、経営が厳しくなって。つい数か月前に、第一工場も閉鎖したんです」
「そうか……」

 森野は静かにそう言うと、昔を思い出すように遠い目をした。
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