解けない魔法を このキスで
私の原点
「美蘭ー、美蘭? みーらーんー」
「わっ! びっくりした。どうしたの? 未散ちゃん」
タブレットから顔を上げた美蘭は、未散の後ろに高良がいるのを見て更に驚く。
「新海さん? どうされました?」
「美蘭ったら、もう。約束の6時だから、迎えに来てくださったのよ」
「えっ、もうそんな時間?」
「ほんとに美蘭はタイムスリップがお得意だわ。ほら、行くわよ」
「あ、うん」
美蘭は急いでタブレットをしまい、立ち上がる。
「新海さん、お待たせしました」
「いや。では行きましょうか」
「はい」
三人で部屋を出ると、下の階のフレンチレストランに行く。
通されたのは個室だった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ふかふかの椅子を引いてもらい、美蘭はそっと腰を下ろす。
緊張気味に背筋を伸ばして座っていると、高良がアルコールメニューを見ながら尋ねた。
「お二人とも、お酒はなにがお好みですか?」
「私はなんでもイケます。美蘭はカクテルとか、飲みやすいワインがいいよね?」
話を振られて、美蘭は控えめに頷く。
「はい。でも、あの、出されたものはなんでも残さず食べる主義です」
すると高良が口元に手をやって、笑いをこらえるのが分かった。
「ですから新海さん、どうぞお気遣いなく」
「いや、あなたこそお気遣いなく。我々は、お客様の好みに合わせたお酒と料理をサーブするプロだと自負しております。お好きなものを教えてくださった方がありがたい」
「あ、そうですね。では軽い口当たりの、ロゼワインをいただけますか?」
「かしこまりました」
高良がメニューを指差しながらソムリエとやり取りし、頷いたソムリエがお辞儀をして部屋を出る。
すると入れ違いに、支配人が入って来た。
「失礼いたします。本日はようこそお越しくださいました。お食事の前にプランナー達からソルシエール様に、ご挨拶させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
美蘭と未散が立ち上がると、チーフプランナーと先日の花嫁の担当プランナーが現れた。
「お食事の前に失礼いたします。白石様、この度は大変お世話になりました。お陰様であの花嫁様も、終始笑顔で結婚式を挙げることが出来ました。私の不行き届きで白石様にはご迷惑をおかけしましたが、ドレスを手直ししてくださって本当にありがとうございました」
担当プランナーに続いてチーフプランナーも頭を下げる。
「私からもお礼申し上げます。お客様に誰よりも寄り添うべきプランナーよりも、白石様の方がはるかにあの花嫁様のお気持ちを汲んでくださいました。我々も白石様を見習って、これからも精進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げられ、美蘭は慌てて手を伸ばす。
「いえ、そんな。お顔を上げてください。私は普段通りのことをしただけです。そんなふうにお礼を言われるなんて、恐縮です。こちらこそ、これからもどうぞソルシエールのドレスをよろしくお願いいたします」
「はい、もちろんでございます」
最後は和やかに笑顔で挨拶した。
「わっ! びっくりした。どうしたの? 未散ちゃん」
タブレットから顔を上げた美蘭は、未散の後ろに高良がいるのを見て更に驚く。
「新海さん? どうされました?」
「美蘭ったら、もう。約束の6時だから、迎えに来てくださったのよ」
「えっ、もうそんな時間?」
「ほんとに美蘭はタイムスリップがお得意だわ。ほら、行くわよ」
「あ、うん」
美蘭は急いでタブレットをしまい、立ち上がる。
「新海さん、お待たせしました」
「いや。では行きましょうか」
「はい」
三人で部屋を出ると、下の階のフレンチレストランに行く。
通されたのは個室だった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ふかふかの椅子を引いてもらい、美蘭はそっと腰を下ろす。
緊張気味に背筋を伸ばして座っていると、高良がアルコールメニューを見ながら尋ねた。
「お二人とも、お酒はなにがお好みですか?」
「私はなんでもイケます。美蘭はカクテルとか、飲みやすいワインがいいよね?」
話を振られて、美蘭は控えめに頷く。
「はい。でも、あの、出されたものはなんでも残さず食べる主義です」
すると高良が口元に手をやって、笑いをこらえるのが分かった。
「ですから新海さん、どうぞお気遣いなく」
「いや、あなたこそお気遣いなく。我々は、お客様の好みに合わせたお酒と料理をサーブするプロだと自負しております。お好きなものを教えてくださった方がありがたい」
「あ、そうですね。では軽い口当たりの、ロゼワインをいただけますか?」
「かしこまりました」
高良がメニューを指差しながらソムリエとやり取りし、頷いたソムリエがお辞儀をして部屋を出る。
すると入れ違いに、支配人が入って来た。
「失礼いたします。本日はようこそお越しくださいました。お食事の前にプランナー達からソルシエール様に、ご挨拶させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
美蘭と未散が立ち上がると、チーフプランナーと先日の花嫁の担当プランナーが現れた。
「お食事の前に失礼いたします。白石様、この度は大変お世話になりました。お陰様であの花嫁様も、終始笑顔で結婚式を挙げることが出来ました。私の不行き届きで白石様にはご迷惑をおかけしましたが、ドレスを手直ししてくださって本当にありがとうございました」
担当プランナーに続いてチーフプランナーも頭を下げる。
「私からもお礼申し上げます。お客様に誰よりも寄り添うべきプランナーよりも、白石様の方がはるかにあの花嫁様のお気持ちを汲んでくださいました。我々も白石様を見習って、これからも精進してまいります。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
深々と頭を下げられ、美蘭は慌てて手を伸ばす。
「いえ、そんな。お顔を上げてください。私は普段通りのことをしただけです。そんなふうにお礼を言われるなんて、恐縮です。こちらこそ、これからもどうぞソルシエールのドレスをよろしくお願いいたします」
「はい、もちろんでございます」
最後は和やかに笑顔で挨拶した。