解けない魔法を このキスで
翌朝は10時にチェックアウトする。
会計は一切請求されず、恐縮して美蘭と未散は高良への感謝の手紙を残した。

そのまま横浜の街へ繰り出す。
まずは船で山下公園へ移動した。

「わあ、いちょう並木が綺麗ね」
「うん。それにバラも咲いてる!」

秋風に吹かれながら、二人でのんびりと公園を見て回る。

「あっ、見て美蘭。プライダルの撮影してる」
「ほんとだ。ロケーションフォトなんだろうね」

ウェディングドレスとタキシード姿のカップルが、海と大きな船をバックに写真撮影していた。

「お天気いいから、良かったね」
「そうだね。白いドレスが青空に映えて素敵」
「さすが横浜。絵になるわあ」
「あら、未散ちゃん。葉山だって負けてませんよーだ」
「船の代わりにヨットの数で勝負よね」

二人であはは!と笑い合い、もう一度花嫁のウェディングドレスに目をやった。

「クラシカルな雰囲気のドレスだね」
「うん。きっとあそこの老舗ホテルで挙式するんだよ」
「ああ、なるほど。古き良き時代の伝統って感じ。新しいオーダーメイドの依頼で、あのホテルで挙式する花嫁様がいたよね」
「じゃあランチがてら、どんなところか見に行こうか」
「そうだね」

大通りを挟んだ反対側のホテルに行くと、重厚感溢れる歴史的建造物とロイヤルブルーの大階段に魅力された。

「素敵だね。時の流れが息づいてる気がする」

小声でささやくと、未散も頷く。

「重みが違うね。この大階段で撮影するなら、ドレスのイメージも変わってくるな」
「うん。あのお客様のオーダー、もう一度練り直そう」
「そうだね。ホームページの写真で調べたのと実際に見たのでは、全然印象が違ったわ」

レストランで昔ながらのメニューを選び、早速ドレスのデザインを練っていく。
仕事にもプライベートにも有意義な時間となり、二人は充実した休日を過ごした。
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