解けない魔法を このキスで
「こんばんは」
「新海さん、こんばんは」
「お待たせしました」
「あ、いえ。私も今来たところです」
「では参りましょうか。バンケットホールは2階です」
「はい」
左手を差し出すと、そっと美蘭が右手を伸ばした。
綺麗な長い指を、高良はきゅっと優しく握る。
美蘭の手を支えながら、大階段をゆっくりと上がった。
ふと横目でうかがうと、美蘭は長いまつ毛を伏せて、はにかんだ笑みを浮かべている。
(可愛らしいな)
グッと手を引いて抱き寄せたくなる衝動を必死で抑えた。
(俺にもこんな気持ちがあったなんて)
これほどはっきりと、誰かを好きになる瞬間を自覚したのは初めてだった。
いや、そもそも女性の手を引いているだけで、ドキドキと胸が高鳴ることなど今までなかった。
(いい大人が、中学生の初恋みたいだな)
きっとそうなのだろう。
これが本当の自分の初恋なのかもしれない。
そう思ってから、いや違うと否定する。
(今、二人で踏みしめているこの大階段。まさにここで俺達は出逢っていた。17年前のあの時に、自分の恋は始まっていたのかもしれない)
先日『プラージュ横浜』で食事をしている時に、ふとしたことから美蘭が口にした言葉に、高良は驚いて目を見開いた。
(まさかあの時の女の子が、彼女だったなんて)
にわかには信じがたい。
だが話の内容から、恐らくあの女の子は美蘭に間違いなかった。
(それに彼女も、あの時のことを大切に覚えてくれていた。しかも『フルール葉山』を私の原点だとまで言って)
10歳の時に見た光景を忘れず、いつか自分の作ったドレスで女の子達をプリンセスにしたいと夢見てくれた。
「それほど大切な場所なんです、私にとって『フルール葉山』は」
こんなにも嬉しい言葉などない。
(彼女は覚えているだろうか? 俺がずっと忘れられないあの言葉も)
いつか聞いてみよう。
そして打ち明けよう。
17年前の君の言葉に、俺は自分の進むべき道を明るく照らしてもらったんだと。
彼女は驚くだろうか?
だが心からお礼を言いたい。
17年前の女の子と今、手を繋いでいる。
高良はそれがまるで奇跡のように思えた。
階段を上がり切ると、さり気なく美蘭の手を自分の左腕に持ってきて掴まらせる。
少し戸惑ってから、美蘭が小さくきゅっと力を入れるのがたまらなく可愛い。
高良は自分の右手を美蘭の左手に重ねて、そっと包み込んだ。
うつむいた美蘭の頬がほのかに赤く染まり、高良の胸を切なく締めつける。
高鳴る胸の鼓動を感じながら、高良は美蘭をエスコートしてバンケットホールに向かった。
「新海さん、こんばんは」
「お待たせしました」
「あ、いえ。私も今来たところです」
「では参りましょうか。バンケットホールは2階です」
「はい」
左手を差し出すと、そっと美蘭が右手を伸ばした。
綺麗な長い指を、高良はきゅっと優しく握る。
美蘭の手を支えながら、大階段をゆっくりと上がった。
ふと横目でうかがうと、美蘭は長いまつ毛を伏せて、はにかんだ笑みを浮かべている。
(可愛らしいな)
グッと手を引いて抱き寄せたくなる衝動を必死で抑えた。
(俺にもこんな気持ちがあったなんて)
これほどはっきりと、誰かを好きになる瞬間を自覚したのは初めてだった。
いや、そもそも女性の手を引いているだけで、ドキドキと胸が高鳴ることなど今までなかった。
(いい大人が、中学生の初恋みたいだな)
きっとそうなのだろう。
これが本当の自分の初恋なのかもしれない。
そう思ってから、いや違うと否定する。
(今、二人で踏みしめているこの大階段。まさにここで俺達は出逢っていた。17年前のあの時に、自分の恋は始まっていたのかもしれない)
先日『プラージュ横浜』で食事をしている時に、ふとしたことから美蘭が口にした言葉に、高良は驚いて目を見開いた。
(まさかあの時の女の子が、彼女だったなんて)
にわかには信じがたい。
だが話の内容から、恐らくあの女の子は美蘭に間違いなかった。
(それに彼女も、あの時のことを大切に覚えてくれていた。しかも『フルール葉山』を私の原点だとまで言って)
10歳の時に見た光景を忘れず、いつか自分の作ったドレスで女の子達をプリンセスにしたいと夢見てくれた。
「それほど大切な場所なんです、私にとって『フルール葉山』は」
こんなにも嬉しい言葉などない。
(彼女は覚えているだろうか? 俺がずっと忘れられないあの言葉も)
いつか聞いてみよう。
そして打ち明けよう。
17年前の君の言葉に、俺は自分の進むべき道を明るく照らしてもらったんだと。
彼女は驚くだろうか?
だが心からお礼を言いたい。
17年前の女の子と今、手を繋いでいる。
高良はそれがまるで奇跡のように思えた。
階段を上がり切ると、さり気なく美蘭の手を自分の左腕に持ってきて掴まらせる。
少し戸惑ってから、美蘭が小さくきゅっと力を入れるのがたまらなく可愛い。
高良は自分の右手を美蘭の左手に重ねて、そっと包み込んだ。
うつむいた美蘭の頬がほのかに赤く染まり、高良の胸を切なく締めつける。
高鳴る胸の鼓動を感じながら、高良は美蘭をエスコートしてバンケットホールに向かった。