解けない魔法を このキスで
「お待たせいたしました、ソルシエールの白石と申します」

40分後、息を切らしながらサロンに現れたのは、スラリと背の高い女性だった。
髪をラフに1つにまとめ、メイクはナチュラルながら、着ているジャケットとスカートがシックな色合いでセンスがいい。

「ご足労いただき、誠にありがとうございます」

そう言って高良が名刺を差し出そうとすると、女性は手で遮った。

「ご挨拶はのちほど。花嫁様は?」
「奥にいらっしゃいます」

案内すると、まだグズグズと涙が止まらない花嫁に近づいてひざまずく。

「花嫁様、初めまして。ドレスブランド ソルシエール代表の白石と申します」

すると花嫁はパッと顔を上げ、目を見開いた。

「あなたが、あのドレスを?」
「はい、わたくしが作っております。お気に召していただけましたか?」
「え、うそ。本当に?」

みるみるうちに花嫁の目に涙が溢れ、再び声を上げて泣き始めた。

「私、どうしてもあのドレスを着たいんです! 他のものじゃだめなの」
「ありがとうございます。わたくしもぜひあなたに着ていただきたいです」
「でも、どうやって?」

花嫁のその言葉は、今この場にいるスタッフ全員の疑問だろう。
皆の視線を一身に受け、女性はにっこりと花嫁に笑いかけた。
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