解けない魔法を このキスで
「え!? これから作り直すということですか?」

花嫁が帰ったあと、美蘭は急いでスタッフに事情を説明した。

「そうです。すぐに取りかかるので、広い作業スペースをお借り出来ますか?」
「えっと、あの、ではここのフィッティングルームはいかがでしょう?」

美蘭はすぐさま首を振る。

「狭すぎます。それに他のお客様もいらっしゃいますよね?」
「ああ、確かに。でしたら空いている客室を押さえます」

そう言って身を翻そうとする支配人に、美蘭がまたもや声をかけた。

「そのお部屋はスイートルームですか?」
「え? いえ。スイートは本日ご予約が入っておりますので、別のお部屋ですが……」
「ドレスをトルソーに着せて、トレーンとベールもしっかり広げた状態で作業出来るお部屋をお願いします」
「そ、そんなに広いお部屋は……」

するとそれまでじっと様子を見守っていた高良が口を開く。

「私が案内します。こちらへ」

スッと背を向けて歩き出した高良に、美蘭は黙ってついていった。
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