素直になれないふたり
ただ、私も嘘をついたという負い目があるから、責めることもできず、私とジローは、女VS男の大喧嘩の仲裁役を引き受けるしかなかった。
結局のところ、本当はもう少し長く滞在するはずだったのに、修羅場の翌日には東京に戻ることに。
修羅場のあと、ジローだけは、
「ごめん⋯⋯あんな嘘をついて」
そう謝ってきたのに、私は素直になれず、
「どうでもいいわ。あの子たちはともかく、私たちの間には何もなかったし」
何もなかったなんて、心にもない言葉だが、そうやって突き放すしかできなかった。
「本当にごめん。もし許してくれるなら、また会ってほしい」
「それはどうかしらね」
「俺、調理師として就職したんだけど、伯父がバーの跡継ぎを欲しがってて。年内に伯父がリタイアするにあたって、今は伯父の店で働いてる。H駅からすぐ近くの、リベルテっていう店なんだけど、許してくれる気になったら、会いに来てくれないかな?」
結局のところ、本当はもう少し長く滞在するはずだったのに、修羅場の翌日には東京に戻ることに。
修羅場のあと、ジローだけは、
「ごめん⋯⋯あんな嘘をついて」
そう謝ってきたのに、私は素直になれず、
「どうでもいいわ。あの子たちはともかく、私たちの間には何もなかったし」
何もなかったなんて、心にもない言葉だが、そうやって突き放すしかできなかった。
「本当にごめん。もし許してくれるなら、また会ってほしい」
「それはどうかしらね」
「俺、調理師として就職したんだけど、伯父がバーの跡継ぎを欲しがってて。年内に伯父がリタイアするにあたって、今は伯父の店で働いてる。H駅からすぐ近くの、リベルテっていう店なんだけど、許してくれる気になったら、会いに来てくれないかな?」