素直になれないふたり
 そう遠くない夏の、ピュアだった私とはまるで違う態度に、ジローはかなり困惑した様子だったが、
「ああ。約束だもんな。来てくれて嬉しいよ」
 時と共に、互いの嘘を水に流し、もう一度やり直せることを、心の何処かで期待していた。
 しかし、あの夏の私は猫をかぶっていた。
 楽しかった反面、そのことに疲れてもいたから、もう本性を隠すことをやめてしまった。
 ジローは、基本的には優しかったものの、割とハッキリとものを言うようになり、時が経てば経つほど、互いに毒づき合ってばかりで、腐れ縁のような関係に。

 19から25までの6年なんて、振り向けばあっという間だった。
 その腐れ縁が、今も続いているというわけである。
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