素直になれないふたり
 別にフォローするつもりではなかったが、本当のことだから、そう返した。
「トーコへの気後れだけじゃない。これでも一応、子供の頃から成績はよかったから、もし金銭的な問題がなければ、進学校や大学にも行けたはずなのに⋯⋯なんて思ったりしたよ。心のどこかでは、まともに勉強もせず、四年間チャラチャラ遊んでいる大学生に対して、嫉妬しなかったと言えば嘘になる。進学も就職も、自分で決めたことなのに、こんなことを思うなんて、カッコ悪すぎるのはわかってるけど」
 私の実家は、特別裕福ではないが、生活に困るようなことは全くなかった。社会に出てからは安アパート暮らしだが、学生時代は家賃10万以上の、セキュリティ万全のマンションに住んでいた。
「ジローって、実家に仕送りしてるの?」
 思わず、ちょっと立ち入ったことを聞いてしまった。
「まあ、一応な。といっても、大した額ではないんだけど」
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