素直になれないふたり
 額の問題ではない。
 ジローは、私と違い、本当にしっかりしている。
 もし、私が貧しい家庭で育ったとして、果たしてジローのように、中学生の時点で、手に職をつける為の進路を自分で決めたり、ましてや、実家に仕送りなどできただろうか。
 まず無理だっただろう。実際、25になった今でも、こんな崖っぷち生活なのだから。
「私は⋯⋯昔から、自分のことが大嫌いだった。高校までは、大人たちに言われた通り、学校の勉強だけしてきたの。大学生になるや否や、派手好きな本性があらわになった挙げ句、大学では優秀な友達について行けなくて。だから、浅はかにも、見た目を武器にしようと読モを始めた。でも、所詮は読モでしかない。落ちこぼれで派手好きのくせに、遊び女にもなれない。もう、一体どこを目指してるのか、自分でもわからないの。25にもなって、バカだよね⋯⋯」
 つられるように、私もそんな弱音を吐いてしまった。
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