素直になれないふたり
「何?」
「あの夏⋯⋯俺、医学生なんて最低な嘘ついただろ?メチャクチャ悔やんで謝っても、振り向きもせず帰ってしまったのに、しばらくして店まで会いに来てくれたのは、どうして?」
「それは⋯⋯なんだか急に人恋しくなったのと、たまたま家が近かったし、代金はとらないって言ったから、飲みに行ったのよ」
 嗚呼⋯⋯どうして素直になれないのだろう。
「もし、許してくれるなら会いに来てほしいって言ったのは覚えてる?初めて会いに来てくれた時、許してくれたのかと自惚れかけたけど、いつ会っても、あの夏と違って、つれない態度だったじゃん。俺⋯⋯どう捉えていいのか、今もずっとわからないままなんだ」
 そっとジローのことを見上げると、今までに見たことのないような切なげな顔をしていた。
「も⋯⋯もう、別にどうでもいいんじゃない?そんな昔のことは。今思えば、お互いまだハタチになるかならないかの子供だったんだし」
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