素直になれないふたり
夢のとなりで
 ある晴れた午後、ジローの生まれ育った町を手をつないで歩く私たち。
 繋がれた左手には、約束の指輪が輝いている。
 既に、私の実家への挨拶は済んでおり、今日はジローのご両親のもとへ挨拶に来ていた。
 緊張したが、ご両親は本当にあたたかい人で、息子が愛した人なら素敵な人に決まっているからと、まだ求職中の身の私のことを、笑顔で快く受け入れてくれた。
「いつか、言ってたわね。結婚したら、ご両親みたいな夫婦になるのが夢だって。お会いしてみて、そう思う理由がよくわかった」
「まさか、初恋の人が、その相手になってくれるなんて夢みたいだよ」
「こんな無力な私でも、一生かけて、その夢だけは叶えたいの」
「トーコさぁ⋯⋯白昼堂々、あんまり可愛いこと言わないでくれないかな?理性がプッツンしそうになるから」
 今の私たちはもう、ずっと素直になれなかった日々が信じられない。
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