フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「よく参った、リリアナ」
「この度の縁談、とても感謝しております」
「うむ。種族の垣根を超え、エドワードと共に国を支えてくれること、期待しておる」

 形式的な挨拶を済ませたロベルト様は、少し疲れた顔をしている。

 私を見る緑の瞳もくすんでいて、魔王様のような威厳は感じられない。なんなら、エドワード様の方が意志の強い瞳をしているわ。
 ヴィアトリス様が美しい顔に笑みを浮かべ、私を見下ろした。

「魔族の姫が嫁ぐとは、なんとも珍しいことですわね。何かと文化の違いもあって、苦労するでしょうが、頑張りなさい」
「ヴィアトリス様、ご心配には及びません。私がリリアナを支えます」
「……そう。王家に泥を塗るようなこと、なさらないでくださいね」

 エドワード様の言葉に、ヴィアトリス様の笑顔が一瞬凍ったように見えた。

 冷たい視線に、ぞくりと背筋が震える。
 ヴィアトリス様の笑みは口元だけ。その黒い瞳は、獲物を値踏みするようにも見える。まるで魔族だわ。
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