フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 こんなの知らないわ。
 胸が締め付けられ、すぐには言葉が出てこなかった。

 今すぐこの手を振り払って帰りたい。だけど、それは魔王様の意思に反する行いだわ。

「女性であればどなたへでも、そのように睦言を囁かれるのですか?」
「これは手厳しいことをいわれる。貴女が、私の妻になられる方だから、ですよ」
「……甘い言葉は慣れません。少々、居心地が悪いですわ」「それは困りましたね。頑張って、慣れて頂かねば」

 穏やかに笑うエドワード様が私を見つめた。
 人族の国ではこれが当たり前だというなら、慣れなければならないわね。
 深く息を吸い、私を捕らえる瞳を真っすぐ見つめ返した。

「よろしくお願いします」
「では、参りましょう」

 微笑むエドワード様に案内され、王城の謁見の間へ進んだ。
 玉座に座すのが彼の兄ロベルト王で、その隣におられるのが王妃ヴィアトリス様ね。
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