フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「デイジー、大丈夫?」
「……魔族の私が、不可侵の森へ入れるのでしょうか?」

 気弱な声にどきりとした。

 大丈夫よと声をかければいいだけなのに、私は彼女を励ます言葉がいえず、冷たくなった手を握りしめた。
 すると、エドワード様が「おかしなことをいうな」と呟いた。

「おかしいでしょうか?」

 驚きを隠せず尋ねる私の声は、わずかに震えていた。
 若葉色の瞳が優しい光をたたえ、大きな手が私の冷えた指に触れた。なんて温かい手だろう。

「リリアナとデイジーは、アルヴェリオンに敵意を持っているのかい?」
「そんなことはありません」

 私が否定するとデイジーも頷く。
 だけど彼女は、不安な顔で「でも」と呟いて、その胸の内を言葉にした。

「……幼い頃から『森には煉獄に連れてゆく悪魔がいる』といわれて育ちました」
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