フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 デズモンドでも、城壁に結界の支柱を使っている。
 でも、あれはそう多く作れるものじゃないわ。広大な森を囲うのに、どれだけの本数を使っているのかしら。

「ここの結界は特注品でね。森の結界を越えるには条件があるんだ」
「条件?」
「まず魔族か人族であること。それと、王家の血を引いているか、王家の承認を得た者でなければ通れない」
「……だから、悪魔は入れないだろうと、仰られたのですね?」
「ああ、そうだ」

 エドワード様は頷くと、再び私の手を引いて歩き出した。
 握る手に、少しだけ力が込められる。まるで、この手を離さないというように。

 再び進んだ石畳の先から、眩しい光が森に差し込んだ。
 少し目を細めて足を踏み出すと、小さな広場に出た。石畳の中央には石碑がある。

 ここが和平条約を結んだ場所、デズモンドとアルヴェリオンの、真の境界線なのだろう。

 石碑の前で立ち止まったエドワード様は、私に向き直った。いつも柔和な笑みを浮かべている彼だけど、今はその微笑みをひそめて、真っ直ぐに私を見ている。
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