フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「エドワード様……泣いていらっしゃるの?」
「……すまない。情けない姿をさらしてしまって」

 そっと私の肩を離したエドワード様は、顔を背けると手の甲で目じりを抑えた。その手に指を伸ばすと、彼は驚いた顔をして私を振り返る。

 エドワード様はいつヴィアトリス王妃の企みに気づき、戦ってきたのだろう。弱みや失敗を見せられず、平和なはずのアルヴェリオンで人知れず戦っていたのね。

 もしも、エリザ様が生きていらしたら、彼女が支えになっていたのかしら。

「……これからは、私が一緒に戦います」

 エドワード様の手を握りしめ、顔も知らない亡霊に胸が痛めながら告げると、低い声が私の名を呼んだ。

「リリアナ。もう一つ、私の話を聞いてくれるか?」
「なんでしょうか?」

 私の手を握るエドワード様は一度手を緩めると、確かめるように再び握り直した。

「エリザの事故死についてだ」
「……エリザ、様」

 私の考えを呼んだのかと思えるタイミングで、エリザ様の名が出てくるなんて。
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