フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 悲しみをにじませながら微笑む姿に、胸が苦しくなった。

「だがこの五年、その証拠を探してきたが、なにも見つかっていない。遺書すらない」
「塔では、誰かご一緒だったのですか?」
「……サフィアだ」
「サフィア……侍女のサフィアですか?」

 予想外な言葉に驚きつつ、ああ、と納得した。
 彼女は、私がヒマワリのドレスを着た時に、誰かを呼んでいた。あれは、やはりエリザ様だったのね。

「しかし、塔には入っていない。エリザは塔にある書を取りに行くといって入った。それは、塔の入り口を守る衛兵も確認している」
「なぜ、エリザ様はお一人で?」
「一人になりたいからと、サフィアを塔の前で待たせたそうだ。それは、衛兵も確認している。そして、彼女以外、塔の中に人は入っていなかった」
「……そんなことがあったから、サフィアは今でもエリザ様のことを思い悩んでいるのですね」

 王弟の妃が自死したとなれば、大問題だ。だから、事故死ということになったのだろう。塔の窓枠が外れたとか、適当な理由をつけて。
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