フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 フェルナンドの薔薇として、いいえ、王弟エドワードの薔薇として、やり遂げてみせる。
 緊張に手を握りしめていると、エドワード様が肩に触れた。

「リリアナ、一つだけ約束をしてくれ」

 真摯な眼差しに、エドワード様の優しさと苦しみが見えるようだった。

 優しいエドワード様のことだから、私がエリザ様と同じ道を辿るのではと心配しているのかもしれない。そう思うと、私の胸はますます苦しくなる。

「約束、ですか?」
「ああ……決して無理をせず、危険だと思ったら逃げるんだ。全速力で」

 安心させるように笑ったエドワード様は、私の髪をそっと撫でた。
 馬車の中での会話が脳裏によぎり、深く息をすって笑みで返す。

「大丈夫ですわ。私、逃げ足には自信がありますのよ」
「頼りにしているよ……私の可愛い薔薇よ」

 私の手をとったエドワード様が「さあ、行こうか」という。
 
 手を取り合った私たちは石碑に一礼をし、踵を返した。すると、まるで背中を押すような強い風が一陣、吹き抜けた。
< 121 / 275 >

この作品をシェア

pagetop