フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 魔王様から仰せつかったのは、王弟エドワードに嫁ぐこと。

 それは、我が国デズモンドとアルヴェリオン国の不可侵条約を、より強固にするための取り決めだと聞かされた。提案したのは、ロベルト王だったはずよ。

 まさか、ヴィアトリス王妃はこの結婚を望んでいなかった?

 だとしたら、なにか企みがあるのかもしれない。もしかして、アルヴェリオンに攻め入ろうと考えているのでは。──それなら、魔王様の血族であるフェルナンド公爵家の私が選ばれるのも頷けるわ。
 
「リリアナ?」
「……今後は、ご迷惑をおかけしません」
「迷惑なんて思っていないのだが」

 ふわりと微笑むエドワード様は私の手を取り、こちらにといって部屋の奥へと導いた。

「ここから見える中庭が、とても美しいんだ」
「庭、ですか……?」
「君はフェルナンドの薔薇、そう呼ばれると聞いているが……どうだい、アルヴェリオンの薔薇は」

 大きな窓を開け放つと、ふわりと春風が入り込んだ。ほのかに甘い香りが漂ってくる。
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