フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
バルコニーから下を見渡すと、色とりどりの薔薇が咲き乱れていた。
魔王様のお城にも大きな庭園はある。ただ、その庭に咲く草花、樹木は全て魔法薬を作るためのものだ。美しさを楽しむものではない。
春を喜ぶ蝶やミツバチが飛び、小鳥のさえずりが聞こえてきた。それを眺めていたら、ほんの少し胸の奥がそわそわとし始めた。
「……この薔薇は、なんのためのに植えられているのですか?」
「面白いことを訊くね」
「デズモンドに咲く薔薇には棘があります。それは、命を守る……武器なんです」
「フェルナンドの薔薇は、武器なんかじゃないよ」
「……私はお飾りだと仰りたいのですか?」
少し驚いた顔をしたエドワード様は瞳を細めると、庭へと視線を移した。
武骨な指先が、ピンクの薔薇を指差した。
「あれは亡き母が愛した薔薇だ。そして、その横にある紫の薔薇は、祖母の薔薇」
「……王家の方々は薔薇を育てられるのがお好きなのですね」
「いや、そういう習わしなんだ」
魔王様のお城にも大きな庭園はある。ただ、その庭に咲く草花、樹木は全て魔法薬を作るためのものだ。美しさを楽しむものではない。
春を喜ぶ蝶やミツバチが飛び、小鳥のさえずりが聞こえてきた。それを眺めていたら、ほんの少し胸の奥がそわそわとし始めた。
「……この薔薇は、なんのためのに植えられているのですか?」
「面白いことを訊くね」
「デズモンドに咲く薔薇には棘があります。それは、命を守る……武器なんです」
「フェルナンドの薔薇は、武器なんかじゃないよ」
「……私はお飾りだと仰りたいのですか?」
少し驚いた顔をしたエドワード様は瞳を細めると、庭へと視線を移した。
武骨な指先が、ピンクの薔薇を指差した。
「あれは亡き母が愛した薔薇だ。そして、その横にある紫の薔薇は、祖母の薔薇」
「……王家の方々は薔薇を育てられるのがお好きなのですね」
「いや、そういう習わしなんだ」