フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 デイジーに探らせている間にも、私はエドワード様と庭でお茶を楽しむことが何度かあった。そんなある日のことだ。

 濃紺に金糸で刺繍が施されたドレスを纏ったヴィアトリス王妃が、私たちに近づいてきた。
 丁度、デズモンドのことを話していたこともあり、わずかな緊張で指が震えてしまった。

 受け皿に戻したカップがカチッと音を立てる。

 静かに立ち上がり、テーブルの横で淑女の挨拶を披露すれば、柔らかい声が「リリアナ」と私を呼んだ。

 冷ややかな声を覚悟していた私は、耳を疑った。

「アルヴェリオンの暮らしには慣れたかしら?」

 慌てて顔を上げると、扇子を優雅に揺らすヴィアトリス王妃と視線がぶつかった。言葉は柔らかく、私を気遣うようなのに、その目はひとつも笑っていない。

「……お気遣いありがとうございます、王妃様。皆様に親切にしていただき、困ることはありません」
「あらそう、よかったわ。エドワードにも優しくしてもらっているのかしら?」
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