フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 優しい言葉に戸惑いながら「エドワード様、恥ずかしいですわ」とこっそりいえば、ヴィアトリス王妃が目をすがめてこちらを見た。

「それに、重厚なドレスは王妃様が好まれておいでだ。その横でリリアナを輝かせるには、こちらの方がよいかと」
「まあ、そんなことを考えていたのですか? 私とお揃いで姉妹のようにドレスを着てもよいのよ。ねえ、リリアナ?」

 扇子で口元を隠した王妃の声だけは、笑っているように聞こえる。でも、その扇子の向こうで、本当はどんな顔をしているのか。
 想像すると背中を冷たい汗が伝い落ちた。

「お揃いのドレスなど恐れ多いです、王妃様」
「ふふっ、リリアナも謙虚ですこと」

 ヴィアトリス王妃の言葉にどきりとした。
 こんな風に優しい言葉をかけ、エリザ様にも近づいたのだろうか。心配を装い、手招き、どうやってエリザ様を死に追いやったのかしら。

 背中がますます冷えていく。

 どう会話を続けるのか正解がわからない。ヴィアトリス王妃の機嫌を取るのがいいのか、このまま気弱な風を装うのか。
 目まぐるしく考えていると、王妃の扇子がパチンと鳴った。
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