フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「……夜の茶会、だと?」

 手に力が入り、便箋にくしゃりと皴がよる。

「リリアナ様は、明日、殿下に相談するとは申していますが……エリザ様のこともありましたので、先にお耳に入れておいた方がよいかと思い、参りました」

 静かに報告するサフィアの瞳が伏せられた。

 そうだ。エリザが塔から転落した日の前夜に、ヴィアトリス王妃の私室に訪れていた。

 何度か私室を訪れていることは知っていた。エリザから王妃の悪事を探るためだから信じてほしいと頼まれ、私は知らぬふりを続けた。

 だがあの夜は、茶会が開かれるなど聞かされていなかった。なにも知らず、いつものように扉の前で「おやすみ」と言葉を交わして自室に入った。

 微笑み一つなく「お休みなさいませ」といって扉の向こうに消えたエリザの姿が蘇る。その姿に、リリアナが重なった。

「……リリアナは、招待を受けるつもりなのか?」
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