フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「物語……エリザ様が訪れたのも、なにか書物を読むためだったのかしら?」
「それは……」
言葉を濁したサフィアの足が止まった。
当時のことを思い出させてしまったのだろう。辛そうに顔を歪めたサフィアの横顔を見たら、申し訳ない気持ちが込み上げた。
だけど、彼女は心を鎮めるように深く息を吸うと、いつもの穏やかな表情を取り戻した。
「エリザ様が転落したとされる窓の側には、一冊の本が残されていたそうです」
「本? 魔導書なの?」
「いいえ。『月影の恋歌集』アルヴェリオンで流行っている恋物語です」
「その本は、今もここにあるの?」
私の問いに、サフィアは静かに「ございます。こちらへ」といって、階段を上がり始めた。
塔の階層によって、蔵書の種類が異なっていた。
二階は子ども向けの絵本や料理の本が収められていた。城に出入りする者なら、誰でも本を読みに立ち入ることができるそうだ。
幼い貴族子女のために、絵本の貸し出しも行っていると、サフィアが教えてくれた。
「それは……」
言葉を濁したサフィアの足が止まった。
当時のことを思い出させてしまったのだろう。辛そうに顔を歪めたサフィアの横顔を見たら、申し訳ない気持ちが込み上げた。
だけど、彼女は心を鎮めるように深く息を吸うと、いつもの穏やかな表情を取り戻した。
「エリザ様が転落したとされる窓の側には、一冊の本が残されていたそうです」
「本? 魔導書なの?」
「いいえ。『月影の恋歌集』アルヴェリオンで流行っている恋物語です」
「その本は、今もここにあるの?」
私の問いに、サフィアは静かに「ございます。こちらへ」といって、階段を上がり始めた。
塔の階層によって、蔵書の種類が異なっていた。
二階は子ども向けの絵本や料理の本が収められていた。城に出入りする者なら、誰でも本を読みに立ち入ることができるそうだ。
幼い貴族子女のために、絵本の貸し出しも行っていると、サフィアが教えてくれた。