フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
 兄を利用する。──自分の身に置き換えたら、そんな大それたことを考えるのも恐ろしいわ。もしも騙したとバレたなら、どうなってしまうか。

 頭の片隅に、デズモンドにいるお兄様の顔を思い浮かべた。温厚だけど、裏切りをよしとしないお兄様は、怒らせたらとてつもなく恐ろしい。敵になど回したくないわ。

 膝の上で拳を握りしめると、エドワード様はその上からそっと撫でてくれた。

「どのように、ロベルト王へお話するのですか?」
「そうだな……王妃が兄上を喜ばそうとパーティーを開こうとしているようです。しかし、国王が中身を知らないのは問題。諸侯に示しがつかないので、秘密裏に確認をした上で、王妃を労って下さい……とでもいえば、乗ってくるだろう。兄上は、国王であることをお忘れではない」

 なるほど、嘘をついてはいないわ。
 それであれば、王妃を疑うのかと跳ね除けられることもないだろう。それに合わせて、私はパーティー開催の相談に行くという体でいればいいわけだ。であれば──

「私も、ヴィアトリス王妃に一つ嘘をつきましょう」
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