フェルナンドの薔薇は王弟殿下の愛で輝く~政略結婚で人族に嫁いだ魔族令嬢は、王弟殿下の優しさで愛を知る~
「それでは、お言葉に甘えて、休ませていただきます」
「リリアナ様、ごゆるりとお休みくださいね。明日、お支度にうかがいます」
「……? ありがとう。色々心配かけてごめんなさい。二人とも、今日はゆっくり休んでね」

 満面の笑みとなった二人は、私が立ち上がって見送ろうとすると、お気になさらずそのままでといいながら、慌ただしく退室していった。

 いつも静かなサフィアまで足音をたてて出ていくなんて。なんだったのかしら。

 部屋でエドワード様と二人きりになると、静けさの中、ほんの少しだけ緊張が走った。

 よくよく考えてみたら、こうして二人っきりになることって、あまりないのよね。
 いつも護衛騎士や侍女が誰かしら控えているし、夜にこうしてすごすのは不可侵の森へいく前夜以来だわ。

 すぐ傍にエドワード様の心音が聞こえた。
 少し早鐘を打っているけど、規則正しいその音がとても心地よく耳に響く。つい耳を寄せて瞼を下ろすと「眠くなったか?」と声が降ってきた。
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